怪我。

 ここでは口を酸っぱくして何度も書いているが、体を武器にする格闘家にとってコンディショニングは重大な企業秘密だと俺は思っている。しかも、俺が最も敬愛する高橋義生の話となるとなおさらだ。だから、俺が知ってるか知らないかは別にしておおっぴらにして欲しくないと強く思っているのだが、当の本人がおおっぴらにしちゃっているものは仕方が無い。

 こうなった以上、憶測でグダグダ書かれることの方がよほど問題なので、俺の勝手な判断ではっきり書いておくが、練習中の負傷で10針を縫合したと聞く。「開放脱臼して10針縫ったんだけど、試合中に再発してタオルでTKO」との報は試合後日、本人から貰った。恥ずかしい話、医学に無知な俺は「ああ、外れたんやな。」くらいの認識だった。だが、「脱臼なのに縫合?」というのが引っかかったのでちょっと調べてみる・・・。

 「開放脱臼」

 それはそれは結構な重傷だ。文字に起こすのもはばかられるほどだ。試合中、金網の中では立っているだけでも激痛だったろう。先月、パンクラスの会場でちらっと会った時はそれこそ、ちらっと話しただけだが、そのコンディションの充実ぶり、長いトンネルを抜けての復帰に際する思いだけは素人の俺にすら痛いほど伝わって来ただけに、アクシデントとはいえその無念さはよくわかる。いや、わからないな。これだけは骨身を削ってきた本人にしか絶対にわからない。わかっているふりをしているだけだ。


 もう、頑張りすぎるほど頑張って来たと思う。


 だが・・・、だがだ!まだまだだ!


 これより酷い修羅場をあの人がくぐって来た事実を俺たち義生ファンはその長い格闘家人生の中でずっと見てきた。


 無責任ついでに言わせてもらおう。俺たちは待っている。