人喰い義生の逆襲。

 賢明な読者のみなさんは既にお気づきだろうが(笑)、先週、高橋さんに会った。ずっと前から「やりましょう」と言いながら諸事情によりうやむやになっていた約束を果たすためだ。いや、時期が時期だけにこちらも変に気を回して、止めておこうかとも思ったが、当の本人が「来る」と言うのでイベントは決行した。正直俺はギブスでガチガチに足を固めて、松葉杖ついた上、ヨレヨレに意気消沈した高橋さんを勝手に想像していたが、普通に元気で普通に二足歩行して、「JREの車内販売のねーちゃんがめっちゃ可愛かった。」というあまり役に立たない情報を俺に教えてくれた。

 会うや否や頼みもしないのに負傷箇所の写メを見せられる(笑)。いや、俺マジ心拍数が上がる(苦笑)。以後、話の種になることを想定して撮っていたのだと思うが「あんたそんな状況でどんだけ冷静なんだよ!」と、思う。練習中にやったらしく「ああなんか痛いな」と思ったら「高橋さん、骨が出てますよ」と言われたそうだ。病院に運ばれる救急車の中で救急隊員に「折れてますかね?」と尋ねたら、「折れてますね。」と即答されて「ああ、試合は無理かな」と思ったというが、そこがポイントじゃないと思うな、高橋さん。検査の結果、骨折はしていないとわかったのでいつもより余計に縫ってもらってマカオ入りしたそうだが、試合中、他の箇所が裂傷してタオル投入、TKO負けというのが事の真相だ。ネットで「開放性脱臼」と検索すると物騒な話しか出て来ないので、俺も勝手な憶測で勝手に陰鬱な気分になっていた。今回不幸中の幸いだったのは「開放性脱臼」の症状の場合、大抵は骨折がついて回るらしいのだが、今回に限ってはそれが無かったということだ。高橋さんは「縫ってしまえば普通の脱臼と同じ」と言っていたが、いや、それ絶対違うよ、高橋さん。


 今回の復帰戦に際する思いというのは並々ならぬモノがあったと思うし、結果に対して悔しくないといえば大嘘だろう。だが、高橋さんは俺ら一般人の想像を超える修羅場を数限りなく越えてきたという事実がある。「どうってことね〜よ。」って感じで自分の大怪我ですらネタにして笑い飛ばしていた。敵わね〜な、あの人には。ハンパね〜わ。


 「せっかくだからゆっくり観光でもしていけば?」と俺は勧めたのだが、「いや、廣戸さんと今後のリハビリの相談をするから」と早々に帰京した。その足で廣戸道場に向かうとのこと。俺らの人喰い義生は既に次の復活に向けて歩みを進めている。

 日常の生活の中で思い通りにならないことなど多々ある。いや、正直クソッタレなことばかりだ。だが、俺は常々人喰い義生のような心身共に強い男になりたいと思っている。頑張るか〜!